重要:本記事は情報提供のみを目的としており、特定の暗号資産の売買・保有を勧誘または推奨する投資助言ではありません。 掲載する評価、市場データ、利用例は調査時点の分析上の情報であり、将来の成果を保証しません。DAIは1米ドル付近を目標としますが、価格、償還、元本、流動性、利回りを保証する商品ではありません。暗号資産は、価格変動、流動性、技術、規制、税務、オペレーション、カウンターパーティー等のリスクを伴います。実際の利用・取引判断は、最新の公式情報を確認し、ご自身の状況に応じて行ってください。本稿の時点データは、原則として2026年7月27日JST時点で確認できた公開情報に基づきます。

エグゼクティブサマリー

DAIは、Ethereum上のスマートコントラクトを中心に発行・管理され、1 DAIを1米ドル付近に保つことを目標とする担保型ステーブルコインです。2017年にETHだけを担保とするSingle-Collateral Daiとして始まり、2019年11月にMulti-Collateral Daiへ移行しました。現在のDAIを理解するには、暗号資産を超過担保として預けるVaultだけでなく、USDC等を扱うPeg Stability Module(PSM)、実世界資産(RWA)、オラクル、清算、ガバナンスを一体で見る必要があります。

Makerは2024年にSkyへ名称と構造を移行し、USDSをDAIのアップグレード版、SKYを新しいガバナンストークンとして導入しました。2026年時点ではDAIは引き続き流通し、Ethereum上のERC-20として送金・取引・DeFi利用ができます。一方、Skyの新しい利用導線、貯蓄商品、資本配分、ガバナンスはUSDS・sUSDS・SKYを中心に展開しています。「DAIとMakerDAOだけを見れば現行プロトコル全体が分かる」という状態ではありません。

DAIには、単一企業が保有者全員に対して銀行預金のような1米ドル償還を約束する構造はありません。Vault利用者は、自分のDAI債務と手数料を返済して担保を取り戻せます。PSMやDAI-USDS変換コントラクトは安定資産間の交換経路を提供しますが、手数料、上限、流動性、コントラクト、基礎資産の発行体等に依存します。この違いは、Circleが発行するUSDCやTetherが発行するUSDTの直接発行・償還モデルとDAIを比較するときの中心論点です。

「DAIは完全に分散化され、担保のすべてがオンチェーンで100%監査でき、相手方リスクがない」という説明は正確ではありません。暗号資産担保とDAI供給はオンチェーンで追跡しやすい一方、RWAの基礎資産、法的権利、保管、銀行口座、管理会社の履行はブロックチェーンだけでは検証できません。PSMに入る中央集権型ステーブルコインには発行体・銀行・凍結リスクがあり、オラクル、ガバナンス、フロントエンド、ブリッジにも固有の依存があります。

清算は、担保率が最低基準を下回ったVaultから担保を移し、DAIで債務を回収する仕組みです。現在のLiquidations 2.0は、旧来の競り上がり入札ではなく、価格が時間とともに低下するDutch auctionを採用し、参加者がその時点の価格で即時購入できます。清算率、債務上限、安定化手数料、清算ペナルティ等は担保ごとに異なり、ガバナンスによって変更されます。固定の「ETHは必ず150%」「ペナルティは常に13%」といった説明はできません。

ペグは、Vaultの発行・返済、安定化手数料、Dai Savings Rate(DSR)、PSM、取引所の裁定、清算、DAIとUSDSの変換等が組み合わさって形成されます。通常は1米ドル近辺で推移してきましたが、2020年3月の市場急落・Ethereum混雑や、2023年3月のUSDCデペグ時には大きなストレスを経験しました。ソフトペグは目標であり、常時1米ドルで売却・交換できる保証ではありません。

2026年7月26日UTCのCoinGecko履歴データでは、DAIの時価総額は約46.52億ドルでした。価格がほぼ1米ドルなら、これは流通供給が約46.5億DAIであることを意味します。原稿で見られた 460 million DAI 相当の表記は一桁小さく、正しくは約46.5億DAIです。価格、供給、出来高はデータ提供者、チェーン、ラップ資産、集計時刻で異なるため、時点値として扱います。

日本ではDAIが暗号資産として取引所に取り扱われてきました。法定通貨建ての「電子決済手段」と同じ法的区分だと決めつけることはできません。2026年にはBinance JapanとGMOコインの取扱い廃止、SBI VCトレードの取扱い廃止予定がJVCEAから公表されるなど、国内の提供状況も変化しています。比較画面に銘柄が表示されても、売買、入出庫、注文方式、メンテナンスの現況は各交換業者の公式案内で確認する必要があります。

DAIの基本情報

項目 内容 確認上の注意
名称 Dai 一般的なティッカーはDAI
目標価格 1 DAI ≈ 1米ドル 法的な元本保証や常時償還保証ではない
主なネットワーク Ethereum 他チェーン版はブリッジ、ラップ、発行経路を確認
Ethereum規格 ERC-20 正式なコントラクトアドレスの照合が必要
発行構造 Vault、PSM等を含む担保・信用システム すべてが同じ超過担保率ではない
担保 ETH系資産、WBTC、ステーブルコイン、RWA等 稼働中の担保とリスクパラメータは変化する
清算 Liquidations 2.0のDutch auction 担保ごとに清算条件が異なる
貯蓄機能 DSR DAIを保有するだけではDSRは発生しない
現行エコシステム Sky Protocol Makerは2024年にSkyへ移行
アップグレード版 USDS DAIと同一コントラクトではない
ガバナンス SKY保有者によるSky Governance MKRはSKYへの移行対象
最大供給 固定上限なし 発行と返済・焼却で供給が増減

DAIのEthereumメインネット上の代表的なコントラクトアドレスは 0x6B175474E89094C44Da98b954EedeAC495271d0F です。ウォレット、ブリッジ、取引所で同名トークンが表示されても、ネットワークとコントラクトが異なれば別資産である可能性があります。

歴史:SaiからDAI、MakerからSkyへ

時期 出来事 意味
2015年 Makerプロジェクトの初期開発 担保型ステーブルコインと分散型ガバナンスを設計
2017年12月 Single-Collateral Daiを開始 ETHだけを担保とする初代Dai。現在はSaiと呼ばれる
2019年11月 Multi-Collateral Daiを開始 複数担保、DSR等を導入。現在のDAIへ移行
2020年3月 Black Thursday 急落、Ethereum混雑、旧清算オークションの弱点が顕在化
2020年以降 PSM・RWAの比重が拡大 ペグと収益源が増える一方、中央主体への依存も増加
2021年 Liquidations 2.0導入 即時決済型のDutch auctionへ更新
2023年3月 USDCデペグの影響 PSMを通じた担保相関・発行体依存を可視化
2024年 MakerがSkyへ移行 USDSとSKYを導入し、ブランド・プロトコル構造を更新
2025年 SKYガバナンス移行を進行 MKRからSKYへのアップグレード、旧モジュール整理
2026年 DAIとUSDSが併存 新機能はUSDS中心、DAIは既存統合と流通を維持

2017年版と2019年版のMaker資料はDAIの基本設計を理解するうえで重要ですが、MKRガバナンス、担保一覧、オークション方式、UI、貯蓄機能を現在の状態として読むことはできません。旧ホワイトペーパーと現行のSky Governance・公式ダッシュボードを併用する必要があります。

MakerからSkyへの移行

DAIとUSDSの関係

Sky公式はUSDSをDAIのアップグレード版と説明しています。DAIとUSDSはともに米ドル付近を目標としますが、別のERC-20トークンであり、名称、コントラクト、対応サービス、利用できる機能が異なります。DAI-USDS変換コントラクトを通じた変換経路が用意されていますが、利用するインターフェース、地域制限、スマートコントラクト、ガス代を確認する必要があります。

USDSはSky Protocolのネイティブステーブルコインとして、Sky Agentsへの流動性供給や、sUSDSを通じたSky Savings Rateへの入口に位置付けられています。DAIの既存流動性と統合は残っていますが、プロトコルの新規機能がDAIへ同じ条件で提供されるとは限りません。

MKRとSKY

SKYはSky Protocolの現行ガバナンストークンです。公式移行サイトは、SKYが唯一のガバナンストークンとして採用されたこと、MKRからSKYへのアップグレードに遅延ペナルティが導入されたことを説明しています。したがって、「MKR保有者が現在も従来どおり全変更を決める」という説明は古く、現行提案、投票契約、参加条件はSky Governance Portalで確認します。

旧モジュールの整理

2025年以降のガバナンス提案では、旧MKRオラクル、DAI Direct Deposit Module、SparkLend内のDAI関連設定等が段階的に変更・停止されています。これはDAIコントラクトが直ちに消えることを意味しませんが、周辺機能、報酬、借入市場、直接預入経路が変わり得ることを示します。

DAIの発行とVault

Vaultの基本

Vaultは、担保を預けてDAI建て債務を生成するスマートコントラクト上のポジションです。利用者は、対応インターフェースから担保を預け、担保ごとの債務上限と最低担保率の範囲でDAIを生成します。

  1. 対応する担保をVaultへ預ける
  2. リスクパラメータの範囲でDAIを生成する
  3. 未返済債務に安定化手数料が加算される
  4. DAI建て債務を返済し、担保を引き出す
  5. 担保率が清算基準を下回ると清算対象になる

DAIを取引所で購入した人は、特定のVaultの債務者になるわけではありません。反対に、Vault利用者は、生成したDAIを第三者へ送った後も自分のVault債務と清算リスクを負います。

担保は一種類ではない

Multi-Collateral Daiでは、ガバナンスが承認した複数の担保タイプを利用できます。担保タイプは同じトークンでもパラメータが異なる場合があり、ETH-A、ETH-Bのように個別の ilk として管理されてきました。

担保区分 主なリスク
暗号資産 ETH、WBTC等 価格急落、流動性、ブリッジ・ラップ発行体
ステーキング関連 stETH系資産等 デペグ、スラッシング、プロトコル、出金待ち
中央集権型ステーブルコイン USDC等 発行体、銀行、凍結、規制、償還
流動性ポジション LP token等 構成資産、AMM、価格算定、スマートコントラクト
RWA 国債・信用資産に関連する構造 法人、保管、法的権利、信用、流動性、法域

暗号資産Vaultでは最低担保率を100%より高く設定することで価格下落の余裕を作ります。ただし、PSMやRWAは同じ方法で常時市場価格を付けてDutch auctionへ流すとは限りません。「全DAIが同じ意味で150%以上の暗号資産により超過担保される」という理解は適切ではありません。

発行・返済・供給

VaultでDAIを生成するとシステム内のDAI供給が増え、返済したDAIは内部会計上の債務解消に使われます。PSM経由の交換、DAI-USDS変換、ブリッジ、プロトコル保有分も供給表示に影響します。固定最大供給量はなく、需要、担保余力、債務上限、手数料、ガバナンス変更によって増減します。

flowchart LR
    A[担保資産] -->|預入| V[Vault]
    V -->|DAI生成| D[DAI流通]
    D -->|債務と手数料を返済| V
    V -->|健全な担保率| R[担保引出し]
    V -->|清算基準を下回る| L[Liquidations 2.0]
    L -->|DAIで担保購入| B[市場参加者]
    L -->|回収DAI| C[システム債務を解消]

ペグ安定化メカニズム

DAIは、法的な固定償還だけで価格を1米ドルへ合わせるのではなく、複数の経済・技術経路で需給を調整します。

Vaultの発行と返済

DAIが1米ドルを上回ると、担保を持つ市場参加者にはDAIを生成して売却する余地が生まれます。供給増加は価格を押し下げる方向に働きます。DAIが1米ドルを下回ると、Vault債務者は市場でDAIを取得して返済する動機を持ち、供給減少につながる場合があります。

この裁定は、担保余力、安定化手数料、ガス代、取引手数料、清算リスク、債務上限、取引所流動性に左右されます。価格差があれば必ず即時に解消するわけではありません。

Stability Fee

安定化手数料はVault債務へ継続的に加算されるコストです。一般に手数料を下げると借入・発行を促し、上げると新規発行を抑え、返済を促す方向に働きます。ただし、市場金利、担保価格、レバレッジ需要、別プロトコルの借入条件も影響するため、手数料変更とDAI供給は単純な一対一関係ではありません。

Dai Savings Rate

DSRは、DAIを専用の貯蓄コントラクトへ預けた利用者に適用される変動レートです。DAIをウォレットや取引所口座に置くだけで自動的に付与されるものではありません。レートはガバナンスで変更でき、ゼロまたは他の水準になり得ます。

Skyの現行導線ではUSDSをsUSDSへ供給してSky Savings Rateへアクセスする設計が中心です。DSRとSSR、DAIとUSDS、預入トークンと受取トークンを混同しないことが重要です。表示APRは元本や将来収益の保証ではなく、スマートコントラクト、ペグ、流動性、税務のリスクも残ります。

Peg Stability Module

PSMは、DAIまたはUSDSと承認されたステーブルコインの交換経路を提供し、ペグの上限・下限を狭める役割を持ちます。交換手数料、利用可能残高、債務上限、緊急停止等はガバナンス設定に依存します。

PSMはペグを強化する一方、USDC等の中央発行型資産への依存を導入します。発行体が資産を凍結する、銀行預金へアクセスできない、償還が停止する、規制措置を受けるといった事象は、PSM資産の価値と利用可能性を通じてDAIへ波及し得ます。

DAIとUSDSの変換

DAI-USDS変換コントラクトは、旧資産と新資産の流動性をつなぎます。変換経路があることは価格安定に寄与しますが、USDS側の担保・PSM・ガバナンスリスクからDAIが完全に独立することを意味しません。Sky Fusion Dashboardが財務データをDAI/USDS合算で表示する点にも注意が必要です。

flowchart TD
    M[市場価格] --> A{1米ドルとの差}
    A --> V[Vault生成・返済]
    A --> P[PSM交換]
    A --> X[取引所・DEX裁定]
    G[Sky Governance] --> F[Stability Fee]
    G --> S[DSR / SSR]
    G --> Q[債務上限・PSM手数料]
    F --> V
    S --> H[保有・預入需要]
    Q --> P
    V --> M
    P --> M
    X --> M
    H --> M

清算とオラクル

Liquidations 2.0

Vaultの担保価値が清算基準を下回ると、Dog モジュールが担保と債務をシステムへ移し、担保タイプごとの Clipper が販売を開始します。Liquidations 2.0はDutch auctionであり、価格はガバナンス設定の曲線に沿って低下します。購入者は許容価格と数量を指定し、その時点の価格で即時にDAIを支払って担保を取得します。

旧方式のように、参加者が終了時まで資金を拘束されながら価格を競り上げる仕組みではありません。オークションが長時間経過した場合や価格が一定割合まで低下した場合は、現在のオラクル価格を基に開始条件を更新できます。

清算で回収する目標は、Vault債務、未払い手数料、清算ペナルティです。必要額を回収した後に担保が残れば元のVaultへ返されます。ただし、急落、ネットワーク混雑、オラクル遅延、購入者不足、担保の流動性不足により、期待どおりの価格で処理できない可能性があります。

リスクパラメータ

パラメータ 役割
Liquidation Ratio 清算対象になる最低担保率
Stability Fee DAI債務へ加算される継続コスト
Debt Ceiling 担保タイプごとの最大債務
Liquidation Penalty 清算時に債務へ加えるペナルティ
buf オラクル価格に対する開始価格の上乗せ
tail オークション条件を更新する時間基準
cusp 開始価格からの下落率による更新基準
Hole 同時清算できる債務・ペナルティの上限

数値は担保タイプと時期で異なります。Web記事に掲載された例示値ではなく、現行Chainlog、ガバナンス提案、コントラクト状態を確認する必要があります。

オラクル

Maker/Skyの担保評価は、ガバナンスが選んだ価格フィードとOracle Security Module(OSM)等に依存します。複数の提供者から値を集め、中央値を利用し、時間遅延を設ける設計が使われてきました。担保ごとのフィード、バックアップ、遅延、停止条件は一律ではありません。

「Chainlink価格の単純な中央値だけでDAIが動く」という説明は不十分です。Maker/Sky独自のオラクルネットワーク、OSM、ガバナンス設定、外部プロバイダーが組み合わさります。誤価格、更新停止、署名者の集中、ガバナンス攻撃、急落への遅れは、不適切な清算または清算遅延につながる可能性があります。

担保・透明性・相手方リスク

オンチェーンで確認しやすいもの

  • Ethereum上のDAI総供給と移転
  • Vaultごとの担保、債務、担保率
  • PSMコントラクトが保有するトークン
  • 担保タイプ、債務上限、手数料等のコントラクト設定
  • 清算オークションと決済履歴
  • ガバナンス提案、投票、実行トランザクション

オンチェーンだけでは確認できないもの

  • RWAの基礎資産が法的に誰のために保有されているか
  • 銀行口座、国債、信用資産の実在、優先順位、換金可能性
  • 管理会社、受託者、カストディアン、銀行の財務健全性
  • 中央発行型ステーブルコインの準備資産と償還能力
  • 契約の法域、倒産隔離、紛争時の執行可能性
  • フロントエンド運営者による地域制限や制裁対応

したがって、DAIの透明性は「暗号資産担保とプロトコル会計をリアルタイムに検証しやすい」という強みを持つ一方、「すべての経済的裏付けをブロックチェーンだけで完全に監査できる」という意味ではありません。

カウンターパーティーの所在

DAIには単一の銀行型発行体が存在しないことと、カウンターパーティーリスクが存在しないことは別です。

  • USDC等の発行体と準備銀行
  • RWAを保有・運用する法人、受託者、カストディアン
  • WBTC等のラップ資産の発行・保管構造
  • オラクル運営者とデータ提供者
  • ブリッジ、取引所、レンディング、DEX
  • Sky.money等のフロントエンドと統合サービス

これらの依存は、資産凍結、法的差押え、倒産、ハッキング、障害、規制変更として顕在化する可能性があります。

市場データと供給動態

2026年7月の時点値

CoinGeckoの2026年7月26日UTC履歴では、DAIの時価総額は約46.52億ドル、取引高は約1.55億ドルでした。価格は1米ドル付近であるため、流通供給はおおむね46.5億DAIです。別の市場データ提供者は、集計時刻や対象市場の違いから異なる出来高・供給を表示する場合があります。

指標 2026年7月の概況 注意点
目標価格 1米ドル 固定償還保証ではない
市場価格 おおむね1米ドル付近 取引所・時刻で異なる
時価総額 約46.5億ドル 2026年7月26日UTCのCoinGecko履歴
流通供給 約46.5億DAI 価格約1ドルから見た概数
24時間出来高 約1.55億ドル 同日の集計。日々大きく変動
最大供給 なし 発行・返済・変換で増減

DAIの供給を日本語の億単位で読むときは桁に注意が必要です。4.65 billion DAI は約4億6500万ではなく、約46億5000万DAIです。

供給を動かす要因

  • 暗号資産価格とVaultの借入需要
  • Stability Feeと外部市場の金利
  • DSR・SSR等の貯蓄レート
  • PSMの残高、手数料、債務上限
  • RWAとSky Agentsへの資本配分
  • DAIからUSDSへのアップグレード
  • DeFiでの担保・決済・流動性需要
  • 清算、返済、ブリッジ移動

市場データサイトの「流通供給」とSkyの「DAI/USDS合算負債」は同じ指標ではありません。DAI単体の市場規模、USDS単体の供給、プロトコル全体の負債を分けて読みます。

保有者と流動性

DAIは、取引所、DEXプール、レンディング市場、ブリッジ、プロトコル財務、個人ウォレット等に分散して保有されます。アドレスが公開されていても、実質所有者、顧客資産と自己資産の区分、複数アドレスの同一管理者は確定できない場合があります。

DAIは主要CEX・DEX・DeFiで利用されてきましたが、全市場で同じ板の厚みを持つわけではありません。大口取引、週末、チェーン混雑、デペグ、取引所障害時にはスプレッドとスリッページが拡大し得ます。集計出来高には自己取引、複数市場の重複、デリバティブ、ラップ資産が含まれる場合があるため、実際に約定できる数量を注文板で確認します。

過去のストレス事例

2020年3月:Black Thursday

暗号資産市場の急落とEthereumのネットワーク混雑が重なり、多数のVaultが旧清算システムの対象になりました。競争的な入札が十分に成立せず、極端に低い入札で担保が取得された事例とシステム債務が発生しました。この経験を受け、清算参加のしやすさ、即時決済、回路遮断、価格曲線等を見直したLiquidations 2.0が導入されました。

この事例は、超過担保であっても、担保価格、オラクル、ブロックチェーン容量、清算参加者、オークション設計が同時に機能しなければ損失を防げないことを示します。

2023年3月:USDCデペグ

Silicon Valley Bankを巡る不安でUSDCが1米ドルを下回った際、当時PSMに大きなUSDCエクスポージャーを持っていたDAIも連動して下落しました。USDCの償還見通しが回復するとDAIも回復しましたが、暗号資産担保型ステーブルコインが中央発行型ステーブルコインを大量に取り込むと、リスクが相関することを示しました。

市場データの極値

一部データ提供者は、DAIの過去価格について1.20ドルを超える高値や0.90ドルを下回る安値を記録しています。ただし、薄い市場の瞬間値、取引所固有の異常値、旧Saiとの混同、集計方法が影響することがあります。「全市場でその価格が継続した」と解釈せず、期間、取引所、出来高を併せて確認します。

DSR・利回り・DeFi利用

DAIそのものは利回り商品ではない

DAIを自己管理ウォレットで保有するだけでは、プロトコルから自動的な利回りは発生しません。DSR、レンディング、流動性提供、取引所サービス等へ預けた場合にのみ、条件に応じたリターンが生じます。

利用方法 リターンの源泉 追加リスク
DSR プロトコル収益・ガバナンス設定 DAIペグ、コントラクト、レート変更
レンディング 借り手の金利 市場、清算、プロトコル、流動性
DEX流動性 取引手数料・インセンティブ 価格乖離、impermanent loss、MEV
取引所サービス 取引所の貸借・運用 取引所信用、出金停止、利用条件
DAI→USDS→sUSDS Sky Savings Rate 変換、USDS、sUSDS、プロトコル

表示APRは変動し、報酬トークン価格や利用者数で実績が変わります。「ステーブルコインだから元本も利回りも安定する」という前提は置けません。

DeFiの構成可能性

DAIはERC-20として、決済、担保、レンディング、DEX、デリバティブ、DAO財務等に統合されてきました。この構成可能性は利用範囲を広げる一方、外部プロトコルの障害が連鎖する経路にもなります。DAI自体のコントラクトが正常でも、ブリッジ版DAI、貸付トークン、LP token、保管取引所に問題があれば利用者は損失を受ける可能性があります。

ガバナンス

Sky Governanceでは、SKYを投票コントラクトへ預けて直接投票するか、デリゲートへ投票力を委任できます。提案はPollとExecutive Proposalを通じて検討・実行され、ガバナンス遅延を経てコントラクト設定が変更されます。

主な決定対象

  • 担保タイプの追加・停止
  • 債務上限、清算率、手数料、ペナルティ
  • DSR・SSR等のレート
  • PSMの資産、残高上限、交換手数料
  • RWA・Sky Agentsへの資本配分
  • オラクル、Keeper、ブリッジ、コントラクトの更新
  • 予算、報酬、プロトコル収益の配分

ガバナンスリスク

投票参加が少ない場合、大口保有者やデリゲートへ意思決定が集中します。悪意ある提案、署名鍵の侵害、デリゲート集中、複雑な提案の見落とし、緊急対応の遅れはプロトコルへ影響します。ガバナンス遅延は防御時間を提供しますが、すべての緊急変更に十分とは限りません。

flowchart LR
    F[Forum・Atlas・提案] --> P[Governance Poll]
    S[SKY保有者・Delegates] --> P
    P --> E[Executive Proposal]
    S --> E
    E -->|可決| D[Governance Security Moduleの遅延]
    D --> X[オンチェーン実行]
    X --> R[担保・金利・PSM・予算を変更]

他ステーブルコインとの比較

項目 DAI USDS USDC USDT FRAX BUSD
主な構造 Vault・PSM・RWAを含む担保型 Skyの現行ネイティブ安定資産 Circleによる法定準備型 Tetherによる準備資産型 Fraxエコシステムの担保・運用型 Paxos発行の法定準備型
目標 1米ドル 1米ドル 1米ドル 1米ドル 1米ドル 1米ドル
直接発行体 単一企業による通常の発行体モデルではない Sky Protocol Circle関連発行体 Tether関連発行体 Fraxのコントラクト・ガバナンス Paxos Trust
主な償還・交換 Vault返済、PSM、USDS変換、市場 PSM、対応変換、市場 適格顧客の発行・償還 適格顧客の発行・償還 プロトコルの現行機構 PaxosでUSD/USDPへ変換
透明性 オンチェーン会計、RWAは外部資料も必要 オンチェーン会計、外部資産は別検証 準備内訳・第三者保証 準備報告・第三者保証 オンチェーンと外部資産を確認 月次資料
主な依存 担保、清算、PSM、RWA、ガバナンス Sky Agents、担保、PSM、ガバナンス 発行体、銀行、国債市場、規制 発行体、保管、資産構成、規制 担保、AMO、ガバナンス、外部市場 Paxos、規制、償還経路
2026年の位置付け Sky移行前からの既存資産 Skyの新しい中心資産 発行継続 発行継続 「部分担保・部分アルゴ」だけでは現状を表せない 新規発行停止、残存分を償還

FRAXを初期の「部分担保・部分アルゴリズム」モデルだけで説明すると、現在の担保・AMO・プロトコル構造を表せません。BUSDはPaxosが2023年に新規発行を停止し、2026年時点でも新規ミントを行っていません。比較では過去の設計と現行運用を分けます。

また、準備資産について公認会計士が行うattestation(保証業務)と、企業全体の財務諸表audit(監査)は同じではありません。USDC・USDT・BUSDを「監査済み」という一語で横並びにせず、対象、基準、頻度、基準日、除外範囲を確認します。

日本での取扱いと実務

法的区分

日本の資金決済法は、法定通貨建てで発行価格と同額で償還すること等を前提とする電子決済手段と、暗号資産を区別します。DAIは国内交換業者で暗号資産として取り扱われてきました。「米ドル価格を目標とする」という経済的説明だけで、法的な電子決済手段に該当すると判断することはできません。

取扱い変更

JVCEAの2026年公表資料では、Binance Japanが3月30日にDAIの取扱いを停止し、GMOコインが6月6日に取扱いを廃止しました。SBI VCトレードは8月5日の取扱い廃止予定を公表しています。その他の交換業者についても、取扱い、売買方式、入出庫、ネットワーク、最低数量、手数料は変更され得ます。

本サイトの市場比較は取得可能な公開データを集約しますが、過去の銘柄設定や停止中のデータが表示される場合があります。注文前に、交換業者の現行取扱銘柄、板の更新時刻、入出庫可否、メンテナンス、廃止予定を確認してください。

日本円価格

DAIは米ドルに対する安定を目標とし、日本円に対する固定価格を目標としていません。DAI/USDが1.00付近でも、USD/JPYが動けばDAI/JPYは変動します。国内市場ではさらに、需給、板の厚み、販売所スプレッド、送金制限が価格差を生みます。

税務

個人が暗号資産の売却、他の暗号資産との交換、商品・サービスへの使用等で得た利益は、原則として雑所得に区分されますが、事業性等により扱いが変わる場合があります。DAIとUSDSの変換、DeFi預入、利回り、報酬、清算、ブリッジ、外貨換算には個別論点があります。「1ドル連動だから損益が発生しない」とは限りません。国税庁の最新資料と専門家を確認してください。

米国・EUの規制

米国:GENIUS Act

2025年成立のGENIUS Actは、決済・決済完了に使われ、発行者が固定額での変換・償還・買戻し義務を負うpayment stablecoinを定義し、許可発行者、1対1の適格準備資産、償還方針、月次開示等の枠組みを設けました。

DAIは単一企業が通常の発行・償還義務を負う構造ではないため、法文をそのままUSDC型と同じように当てはめることは難しい一方、「暗号担保だから自動的に規制対象外」「米国で認められていない」と断定することも適切ではありません。発行者の解釈、二次流通、フロントエンド、仲介者、非payment stablecoinに関する調査・規則を含め、具体的な事実と将来の当局解釈が重要です。

EU:MiCA

MiCAは、暗号資産が公式通貨または一つ以上の資産を参照して安定価値を目指す場合、設計に応じてe-money token(EMT)またはasset-referenced token(ART)の規則を適用します。MiCA前文41は、供給を増減させるいわゆるアルゴリズム型であっても、公式通貨や資産を参照して安定価値を目指すなら、設計方法に関係なく該当する規則を適用すると説明しています。

したがって、「アルゴリズム型はMiCA上のステーブルコインではなく認可対象外」という原稿の説明は逆です。DAIの発行者、募集、取引所上場、既存トークンの経過措置等への具体的適用は法的分析を要し、記事だけで適法性を判断できません。

規制を比較するときの注意

「ステーブルコイン」は市場用語であり、各国法の定義は一致しません。同じDAIでも、暗号資産、payment stablecoin、ART、EMT、金融商品、商品、その他のトークンのどれに該当するかは、法域、提供行為、当事者、償還義務、利用方法で変わり得ます。

主要リスク

ペグ・市場

  • 1米ドルを下回る、または上回る可能性
  • 大口売買、取引所障害、市場ストレス時のスプレッド拡大
  • PSM残高や裁定資金が不足する可能性
  • 日本円では為替変動を受ける
  • DAIからUSDSへの移行に伴う流動性変化

担保・清算

  • ETH、WBTC、ステーキング資産等の急落
  • オラクル遅延とネットワーク混雑
  • Dutch auction参加者とDAI流動性の不足
  • RWAの信用、法的権利、保管、換金
  • 中央発行型ステーブルコインの凍結・償還停止

技術

  • DAI、Vault、PSM、変換、貯蓄コントラクトのバグ
  • ガバナンス更新で新しい脆弱性が入る可能性
  • Ethereumの手数料・混雑・reorg
  • ブリッジ、ラップ資産、フロントエンド、ウォレットの侵害
  • フィッシングと偽コントラクト

ガバナンス・移行

  • SKY投票力とデリゲートの集中
  • 悪意ある提案または鍵侵害
  • 緊急対応の遅れ、または過度な裁量
  • DAI・MKRの旧機能停止やインセンティブ縮小
  • DAI、USDS、sUSDS、DSR、SSRの混同

規制・税務

  • 発行・交換・フロントエンドに対する新規制
  • 取引所の上場廃止、入出庫停止、地域制限
  • 制裁・AML対応による統合サービスの制限
  • 変換、利回り、清算に関する税務の不確実性

確認チェックリスト

分野 確認項目 読み違えやすい点
トークン ネットワーク、コントラクト、ブリッジ 同名の偽トークン・ラップ版
価格 DAI/USD、DAI/JPY、板、スプレッド ドル安定と円安定を混同
供給 DAI単体、USDS単体、合算負債 billionと億の桁
担保 Vault、PSM、RWA、ラップ資産 全担保が暗号資産・超過担保だと仮定
清算 担保別パラメータ、オラクル、Dutch auction 古い競り上がり方式を現行と解釈
貯蓄 DSR、SSR、預入先、受取token DAI保有だけで利回りが発生すると誤解
ガバナンス SKY投票、提案、実行、遅延 MKR時代の説明を現行と解釈
取引所 取扱い、廃止予定、入出庫、更新時刻 過去の銘柄ページだけで利用可能と判断
規制 法域、提供行為、発行者・償還義務 市場用語と法的区分を同一視
リスク ペグ、担保、相手方、技術、税務 「分散型だから相手方リスクなし」と判断

まとめ

DAIは、Vaultでの担保付発行、清算、安定化手数料、DSR、PSM、裁定を組み合わせて1米ドル付近を目標とする、DeFiの代表的な担保型ステーブルコインです。2019年のMulti-Collateral Dai、2021年のLiquidations 2.0、PSMとRWAの拡大を経て、初期の「ETHだけで裏付けられた完全オンチェーン通貨」より複雑な構造になりました。

2024年以降はMakerからSkyへの移行により、DAIとUSDS、MKRとSKY、DSRとSSRが併存しています。DAIは引き続き流通しますが、新しいガバナンスとプロダクトはUSDS・SKY中心です。旧Maker資料だけでは現行状態を把握できません。

DAIの強みは、供給、Vault、担保、清算、ガバナンスをオンチェーンで追跡しやすく、単一企業の銀行口座だけに依存しないことです。一方、PSM、RWA、ラップ資産、オラクル、ガバナンスを通じて中央主体・外部制度へ依存します。分散化は二者択一ではなく、どの機能を誰が停止・変更でき、どの資産がオフチェーンにあるかを具体的に確認する必要があります。

約46.5億DAIという2026年7月の供給規模、通常時の狭いペグは重要ですが、過去には清算失敗とUSDC連動デペグを経験しています。価格安定、償還、流動性、利回りは保証されません。利用時は、DAI単体の市場データ、Sky全体の財務、担保構成、現行ガバナンス、取引所の提供状況を分けて確認します。

参考資料

DAI・Maker・Sky公式

Vault・清算・オラクル

市場・比較

規制・日本

免責事項

本記事は情報提供のみを目的としており、特定の暗号資産の売買・保有を勧誘または推奨する投資助言ではありません。公開情報をもとに可能な限り正確な記載に努めていますが、完全性・正確性・最新性を保証するものではありません。将来の記述やシナリオは成果を保証しません。DAIは1米ドル付近を目標としますが、価格、償還、元本、流動性、利回りは保証されず、元本の全部を失う可能性があります。税務・法務上の取扱いは居住地や利用方法により異なります。利用前に最新の公式情報と専門家の助言を確認してください。